ネオバンダム


 ネオバンダム   第一話『黒いバンダム』  

西暦200X年8月16日。日本革命により、軍事国家となった日本帝国は米国に宣戦布告した。
レーザーで撃ち落とす事の出来ない地・海底ミサイル『とどろき』により、米国本土を核攻撃した日本は世界中からの非難を受けた。
翌17日、SONYサイバーテクノロジー社と北朝鮮が共同開発したヒト型機械兵−メガ・ボディが国連基地を強襲し、これを鎮圧した。
奈良の大仏が起き上がったような、全身濃緑色の、巨大なロボット兵。
日本の人気ロボットアニメの主役メカの名前に似せて、その機体は『バンダム』と名付けられた。

 ※      

太平洋上空。三機のメガ・ボディが編隊を組んで飛行している。
松堂竜兵の乗る『バンダム3号機』と、ひとまわり小型の量産型メガ・ボディ『耀高』が2機。
アメリカ軍無敵艦隊撃破に向かっているのだ!
「見えてきたぞ」
米軍巨大戦闘空母『ペーリ』。400メートル級の移動要塞だ。
他にも 何隻か空母や戦艦がいた。
「よし、アタックするぞ」
松堂が攻撃命令を出した。
その時、天からの一条の光が、『耀高』の一機を頭頂から貫いた。
「衛星ビームか!」
松堂はあせった。

 ネオバンダム   第二話『敵国のビーム』  

メガ・ボディの、その機体はおよそ約47パーセントが生体組織で構成されている。
ヒトのDNAをもとにして作られた巨大な手・足・胴体の筋肉や腱などがそうだ。
それを超合金の外殻で包んでいる。
栄養剤や保護液等の薬品を組織に循環させることによって、老化を遅らせたりしている。
戦闘時にはドーピング注入を行い、機体のビルドアップを行う。
松堂はバンダムのギアを一段上げ、ドーピング注入のボタンを押した。
バンダムの機体が無言の絶叫を発する。
松堂には聞こえていた。
バンダムは頭頂にあるセンサーで衛星から発射されたビームを感知し、機体を捻ってこれを回避した。
そこに松堂の意志はなかった。

 ネオバンダム   第三話『ニュータイプ』  

「撃たせるかよっ!」
竜兵はバンダムの背中のランドセルに装備されたショットスプレーガンを取りだし、ペーリの指令塔を狙って撃った。
巨大空母の艦橋が粉々に吹き飛び、炎に包まれた。
「レーザーの攻撃が止んだぞ!」
若い声。『耀高』の新人パイロット、岸・キタノだ。彼にはボディ・ドライバーとしてのセンスがある。
「一気にせん滅するぞ」
上官は竜兵だった。だからバンダムに乗っている。
空を舞う二体の巨人は、太平洋を文字どおり炎の海へと変えていったのだ。
艦隊の全滅には、二分とかからなかったというのが現実の数字であった。
この奇襲作戦の成功で松堂竜兵は少尉となり、岸は軍曹になった。

 * 

ネオ東京。午前一時。
長谷川徹也がセックスをしていた。
玩具を相手にした行為がセックスと呼べるのなら。
高性能ダッチワイフ『白雪姫』。新素材のラバーは動きによって発熱し、ほんもののそれに近い体温を再現した。
「オゲッ!」
徹也ははてた。七度目だった。
いい加減、中を掃除しなくては、と思う。
「よかったよ。聖子」
徹也はそれに名前をつけていた。
聖子とは徹也が若いころストーキングした女だった。

 ネオバンダム   第四話『サイボーグ』  

ネオ東京が朝をむかえた。朝陽の輝きが高層ビルを照らし出す。
だが時折、空高くに、それとは別の輝きが発せられては消えてゆくのが見えた。
レーザー攻撃の閃光だった。
ネオ東京を狙撃し続ける米国軍事衛星の高出力レーザーが東京上空に張られたシールド波に遮られて消え散っていくのだ。

        *          

長谷川徹也はCIAの工作員。
彼の任務は発電所を破壊し、都市を包むシールドを無効にする事だった。
彼の生活の必需品であるダッチワイフ・聖子の掃除をすませた徹也はアタッシュケースに聖子を収納して、早朝、ホテルをあとにした。
駅のホームに立った時、徹也は強い目眩をかんじた。
(抜きすぎたのか…)
その時!徹也は背中に強い衝撃を受け、線路に落ちた。
徹也はすぐに上体を起こし立ち上がりかけた。電車がすぐそこまで迫っていた。
ものすごい恐怖と同時に徹也は口内に仕込まれた加速装置のスイッチを入れた。
徹也の世界がスローモーションへと変わる。
音も重く不快なものに変わっていた。
電車はもう徹也の目の前に迫っていたが、その動きはなめくじのように遅い。
徹也はホームによじのぼり、あたりを見渡した。自分の背中を押した奴をさがす。

 ネオバンダム   第五話『少年』  

加速モードとなった徹也は、脳に加速剤が注入されるため、思考速度そのものも加速される。
徹也は自分を線路に突き落とし、電車に轢かせようとした相手を探した。だが見当たらない。
(そんな筈はない。常人の世界では俺が線路に落ちてから一秒と経過していない‥!つまり俺を押した犯人はまだ、それらしい姿勢のままでこのあたりに立っていなければおかしい!)
だが、それらしい者はなかった。
すこし離れた場所にサラリーマンや、OLらしい人影がパラパラといるだけだ。
かれらに徹也の姿は見えてない。
徹也がじっとしていれば別だが、猛スピードで動く徹也は、通常の人間の動体視力や思考速度では知覚できるものではないからだ。
「!」
徹也は気づいた。
自分を見つめる目に。
時を超えた世界で。自動販売機だった。
その横に立つ少年。美しい切れ長の眼は、邪悪な黒い力線を放ち、今にも徹也を犯そうとしているかのようだった。
顎が少し、出ている。
「貴様!」
徹也は叫んだ。
常人には聞き取れぬ高く短い音。
周囲のサラリーマンたちの鼓膜は破れるのだが、それにはまだ時間がかかる。
少年は徹也に向かってゆっくりと歩き出す。
まちがいない、少年も加速装置を持ったサイボーグだ!

 ネオバンダム   第六話『特公』  

「特公か」
「私は高橋真市郎」
美しい少年は名乗った。
「お察しの通り特殊公安の人間です」
「人間か…。そいつはちょっと、うなずき難いな」
「ほう。では私は何です」
「貴様は犬だ」
「あなたは…」
高橋の声はうたうようだった。
「日本民族の血を持つ者でありながら米英国に意志を売り渡した。許し難き罪人…」
「‥‥」
「非国民だ…」
「私は平和を望む者だ」
「ほう」
「このままでは日本は世界から消される。そうなる前に内側から政権を崩壊させ戦争をやめさせるのだ」
「窓の内側での平和など‥」
「窓だと?」
「窓の外は地獄じゃないか…。米国の生み出した地獄。我々、日の本の民は窓を破り、飛び出さねばならぬ。そのための『とどろき』であり『バンダム』なのだ!日本が世界を統治するのだ!」
「貴様のような狂人が、国民(ひとびと)を不幸な空間に引きずり込むからっ!」
加速装置を使用したサイボーグ同士の戦い。
徹也を轢死させるはずだった電車は、あれからまだ、数十センチしか進んでいない。
徹也が、高橋少年のパンチによって吹き飛び、背後の電車の窓をやぶって中に転がりこんだ時、シートに座っていた青年サラリーマンの首と、その隣の老人の耳と肩を削り取っていた。

 ネオバンダム   第七話『サイボーグ・ファイト』  

おそろしいサイボーグ少年・高橋真市郎が徹也を追って電車に飛び込んできた。
サイボーグのその怪力で、電車のドアを押し破ったのだ。
砕けたガラスや、金属片はまだ空中にある。それらが床に落ちるには、まだ時間がかかる。
かれらの時間では、だが。徹也はもう立ち上がっていた。
電車の中で高橋と向かい合う。
「見事だな」
徹也は自分の巨体を一撃で吹き飛ばした、敵の性能を讃えた。
「何か訓練を受けているのか」
「訓練?」
高橋はあざ笑った。
「訓練など‥。私の戦闘用補助脳には潜在格闘技“ゲドー・ケン”がインプットされているのだ。あなたに勝ち目はない。加速を解除し、大人しく投降するのだ」
高橋は、アゴをしゃくりながら自信たっぷりに言った。
徹也は肥満体に見える巨体(そのようにカモフラージュしてあるのだが)を獰猛に突進させた。
最大出力で拳を放った。
高橋の細い腕に、かるく捌かれる。
徹也はがくぜんとした。
高橋の拳が舞う。脚が躍る。
徹也の顔面に打ち込まれる無数の拳。
徹也の視界が明滅する。
内線の乱れで。合金製の頭蓋がゆがむ。
「ぅああァアーッ!!」
徹也が血と涎をまき散らして悲鳴をあげた。
逃げようと背をむけたら尻を蹴られてブザマに横転した。

 ネオバンダム   第八話『加速解除』  

「外道拳!」
高橋が倒れた徹也の尻をそのへんに落ちていた鉄パイプでビシビシと叩いた。
徹也は尻に一撃、また一撃と与えられる激痛に悲鳴をあげた。
高橋は「アッアッアッ」と声高らかに笑った!
その時!
ドグッ!ガシャン!
破れた扉やガラスの割れる音が電車の走行音の中にひびいた。
転がったサラリーマンの首が床にバウンドして天井にぶつかった。
老人が倒れる。それを見ていたOLが、ワンテンポ遅れて悲鳴をあげた。
「!?」
高橋が攻撃をやめてあたりを見回す。
徹也は、はあはあと息をきらした。
「邪魔が入ったか…。何者かが外部から信号を送り、我々ふたりの加速スイッチを強制解除したようだ。貴様の仲間か…」
徹也は答えなかった。
「チッ‥!」
高橋は停車した電車から素早く降りて、ホームを足早に去っていった。
徹也は鉄パイプに打たれた尻の痛みから立ち直り、ようやく電車からはいずり出た。
駅員に呼び止められたので加速して逃げた。

 * 

日本帝国作戦本部。将軍たちが集まり、会議をしていた。
「米国のミサイル攻撃…大したものでもありませんでしたな」
「バンダムチームの活躍のおかげですな…」
笑いあうのだった。

 ネオバンダム   第九話『軋轢』  

「ホモなのかよっ!」
松堂竜兵の拳が斎藤浩16六等兵のアゴを貫いた。
斎藤16等兵が訓練中にもかかわらず「おなかが痛い」とうそをつき、男子便所で自慰をしていたからである。
斎藤はとくに男色ではない。相手をホモよばわりして罵るのは竜兵の癖なのだ。
 
 ネオバンダム   第十一話『マイツという男』  

「マイツ博士、ロボット工学の第一人者である貴方がなぜこんな所に?」
「君達に会いに来たのだ。松堂竜兵、そして斎藤浩くん」
「どういう事です?」
「君たち、スーパーロボットに乗ってみないか」
「えっ!」
「メガ・ボディの事でありますか?」
「何がっ!」マイツ博士の鉄拳が、まぬけな質問をした斎藤16等兵の口を直撃した。
斎藤の意識は瞬時にして失われ、よぶんな動きの無いきれいな倒れ方をして、後頭部が床に直撃した。
斎藤はそのままぴくりとも動かなかった。
松堂はあぜんとした。
「なにがメガ・ボディだ、バカが…。だとしたらなんのために私がスーパー・ロボットという単語を使用したのだ…。バカが…」
マイツはベッ!と大量の唾を吐いた。
失神して倒れている斎藤の口元にひっかかり、そして鼻の穴の片方の中に流れ込んでいった。
斎藤が無意識に軽くむせ込んだ。が、意識は帰らない。
「豚がァ‥ッ!」
ブベッ!!マイツは斎藤の顔にもう一発、唾をぶち吐いた。松堂はふるえた。
マイツのズボンの股がふくれており、勃起してるように見えるのは気のせいだと思いたかった。
「少尉。すまんがその男をかついで付いてきてくれないか」
「了解しました、マイツ博士っ…!」
 
 ネオバンダム   第十二話『選ばれた男』  

メガ東京。旧スミダ地区にある広大な敷地。
ドクターマイツのロボット研究所だった。
「おかえりなさい。マイツ博士」
「おう早川くん。出迎えご苦労」
「そちらの方々が例の…?」
「松堂竜兵君と斎藤だ」
早川は二人を笑顔で迎えた。
「私の助手の早川君だ。今回のスーパーロボット計画は一部、彼のアイデアによるものだ」
「それはまた優秀な助手さんで」
松堂は握手のため右手を伸ばした。
「シッ!」
早川の左ジャブが松堂の顔面の数ミリ直前で寸止めされた。
松堂は一瞬、硬直した。
早川がニヤッと笑う。
「いい忘れていたが彼はプロボクサーとしてのライセンスも取得していてね…。ただのインテリのお坊ちゃんと思ってなめてかかると痛い目をみる。フフフ…」
マイツは葉巻に火をつけてスパスパと吸った。早川がゲホゲホとせき込んだ。
斎藤はその瞬間を見逃さなかった。
「ドスコイ!」
だが早川にかんたんによけられ、テンプルに一撃を食らい、再び失神するのだった。
だが次の瞬間、ケェェーッ!という竜兵の怪鳥のような奇声とともに早川のテンプルもまた、竜兵の一本拳によって貫かれていた。
早川は失神、失禁した。
「おお!」
マイツが驚嘆の声をあげた。
「やはり‥やはり君こそが」

 ネオバンダム   第十三話『その名はネオバンダム』  

「三人とも付いて来給え」
マイツ博士が三人を地下倉庫に案内する。
三人とはもちろん竜兵、早川、斎藤だ。
早川は失禁したため、下をジャージーにはきかえていた。
時折、松堂をすごい目で見ていた。
ぎいい、という不愉快な音をたてて、地下倉庫の扉が開かれた。
「真っ暗でなにも見えませんな」
「今、ライトをつける」
まばゆい光が四人を包み込んだ。
「おお!」
三人は声をあげた。
そこに鎮座しているのは三機のマシーンだった。
「赤い機体のこれは…戦闘機!?」
「『ドゥル・ヘッダー』。超音速万能戦闘機。少尉、君の乗るスーパー・マシンだ」
「この巨大なトラック型の戦車はッ!」
「『ベア・パワード』君の乗る機体だよ早川君。…知っているだろう?」
早川はにぎり拳をつくって唇をかんだ。
「これは船でしょうか」
「斎藤くん、君が船長だ。この船の名は『バミューダ・ダウナー』」
「し、しかし…!肝心のスーパー・ロボットの姿が見当たりませんが…!?」
「ふふふ、まだわからないかね?少尉。スーパー・ロボットは君たちの目の前にある!」
「まさか…では、まさかそんなッ!」
「…この、三機のスーパー・マシンは合体する!奴の名は『天皇バンダム』ーッ!」
松堂は脱糞した。

 ネオバンダム   第十四話『敵襲・Part1』  

その時!基地内に空襲警報が鳴り響いた!
「マイツ博士っ!?」
「まずいな、おそらくは、米国軍最新兵器の攻撃だ」
「最新兵器!?」
四人は高速エレベーターに乗り、司令室に移った。何人ものオペレーターがあわただしくしている。
「状況はっ!?」
「これをご覧ください!」
壁一面の巨大スクリーンに映し出されたのは、これまた巨大な全身金属の魔神だった。
黄色く光る一つ目と背中に取り付けられた黒い羽根。まるで神話から抜け出た怪獣だ。
マイツは愕然とした。
「アメリカの奴ら、とうとうあれを開発したのか‥!」
マイツはフラフラとよろめいた。
尋常な驚き方ではない。
「シールドを突破したというのか…!」
竜兵には、少しグロテスクなデザインの只のメガ・ボディにしか見えない。
「日本軍のMBが三機、迎撃に向かっています」
「機体は何だ!?」
竜兵がオペレーターにたずねる。
「‥『火影』が二機。もう一機はバンダムタイプの改造型のようですが…」
「『火影』は最新鋭の強襲型MB!それにバンダムが一機ついているのならあんなこけ脅しのできそこないMBに負けたりはしないだろう」
「君は…君たちは知らないッ!あれはMBと呼べる物などでは無い事を…!」
「…!?」

 ネオバンダム   第十五話『敵襲・Part2』  

「君たちはあれがメガ・ボディなどと呼べるものではないという事を知らないッ!」
「どういう事ですっ!マイツ博士!」
マイツは、顔を近づけて迫る斎藤を反射的に殴った。
斎藤の前歯がぐらつく。
「…デビル・マシンだ!」
「デビル・マシン(悪魔機械)…?!」
松堂がうわごとのようにつぶやいた。
「左様。奴等は暗黒界から召還した悪魔たちをMBの電子回路にすまわせロボットに魔物の力を宿らせたのだ」
「そんな事が!」
「可能だった…!現に奴一機の力で日本軍太平洋第三艦隊は消滅した…!奴の名は『M・ザムール』!」 
デビル・マシン『M・ザムール』の搭乗者マイケル・シー大佐は41才。19人の少年を殺害しては、自宅の花壇に埋めた殺人鬼だ。
二年前に死刑判決を受けたが、軍が彼の命を買った。悪魔に捧げるために。
「ジャップのブリキ人形どもが‥」
三機のMBが目の前に迫る。
最初に撃墜されたのはバンダムタイプだった。
全身がむらさきの炎に包まれ、あっという間にバターのように溶解したのだ。
残った二機があとを追うのも時間の問題と思えた。
「や、やられる!」
「…博士、『天皇バンダム』の発進許可をください!」
竜兵が叫んだ。

 ネオバンダム   第十六話『敵襲・Part3』  

「博士!天皇バンダムで出撃しましょう!」
マイツ博士の顔は汗でびっしょりだった。
「…不可能だ。天皇バンダムを出撃させるには日本天皇の勅令が必要なのだ!」
「バカな!」
「シッ!口を慎みたまえ、少尉!」
そうこう言っているうちに『火影』が一機、文字通り炎に包まれ溶解していった。
残った一機は、何とか離脱しようと逆噴射するが『M・ザムール』に今にも追いつかれそうだ。
「今はそんな事を言っている場合ではないでしょうよ!」
「ドスコイ!」
斎藤の張り手がマイツにハート・ブレイク・ショットをあたえた。
マイツはダメージにより失神した。
やばい倒れ方だった。
斎藤は冷徹な目でマイツを見おろした。
「マイツ博士は名誉の負傷をおって倒れられた‥。この場はマイツ博士に替わり、松堂少尉が戦闘の指揮をとる!」
斎藤の豪声が司令室に響きわたる。
早川が竜兵を見上げる。
「少尉!みんなが君の命令を待っている…ッ!」
竜兵はスクリーンに目を向けた。
逃げ回る『火影』の右足がむらさきの炎に包まれ溶け散っていく。
竜兵は拳を握りしめた。
そして決意した。
「天皇バンダムを発進させる…。早川くん、斎藤16等兵!スタンバイだ!」
「ラジャァーッ!」
「ドスコイ!」

 ネオバンダム   第十七話『出撃』  

空中を逃げ回る日本帝国最新鋭MB『火影』。バンダムタイプをベースに、空中戦専用に特化させた機体だ。
右足を魔法の炎にやられ、失っている。
(振り切れない…!)
米軍DM『M・ザムール』が迫ってくる。
その一つ目から魔炎が発射されようとしていた。
その時!赤い戦闘機が『M・ザムール』の背後に現れた。
「なに!」
マイケルは振り返りざまにファイアー弾を連射した。
直撃!
だが戦闘機『ドゥル・ヘッダー』は無傷のまま、そこに滞空していた。
「そんな馬鹿な…!」
悪魔の力が通用しない。
竜兵もまた、『ドゥル・ヘッダー』のコックピットで舌を巻いていた。
「対妖空フィールド…半信半疑だったが、これ程の防御力を持つのか‥!」
竜兵に遅れて、二機の戦闘マシンが飛んできた。
『ベア・パワド』と『バミューダ・ダウーナ』だ。
「おそいぞっ!貴様たち!」
「いやぁ、渋滞がひどくて…」
「女たちがなかなか放してくれなくてね…」
「…!?」
下手くそな冗談で返してきた斎藤と早川には、あとで鉄拳制裁をくわえねばなるまい、と竜兵は思った。
だが今ではない。
「あの三機‥わが軍の?」
『火影』のパイロット・塚本京子はある程度、距離の離れた上空で旋回し、様子を伺った。

 ネオバンダム   第十八話『合身』  

「バンダムにチェンジだ!竜兵!」
早川が叫ぶ。
「よし!二人とも、1、2、3で同時に合体ボタンを押すんだ!」
「ドスコイ!」
ドスコイという返事のしかたはやめさせようと竜兵は思った。
なんかだんだんムカついてきたのである。
「合身Go!」
松堂の合図で三人は同時にボタンを押した。
1、2、3のかけ声は、なんかやらなかった。

 ネオバンダム   第十九話『必殺!ゴッド・マグナム』  

「あれはもしや、例のスーパーロボット計画の…!」
京子の眼が輝く。
(完成していたんだ…!スーパーバンダム‥!)
三機の戦闘メカは合体して60メートル級の巨大ロボ・『天皇バンダム』に変形した。
『M・ザムール』はかなわぬと見たか、背を向けて撤退をはじめた。
「天皇マグナム!」
バンダムが手にしたそのビッグ・ガンは、その銃身そのものの大きさが既に通常のメガ・ボディのサイズと同じくらいだった。
マグナムが火を吹き、デビル・マシンとその主の犯罪者を忘却の彼方へと追いやった。
「勝ったぞ。悪魔は去った…」
『素敵!それがマイツ博士が極秘裏に開発したという、うわさのスーパーロボットなのね!』
「‥!女の声!?」
「『火影』からだ。女がパイロットだったとはな…」
早川が好色そうに舌なめずりする。
「『火影』のパイロット!聞いているかっ!」
「こちら『火影6号機』、塚本京子中尉。そんなに大きな声を出さなくとも聞こえています。…スーパーバンダムのパイロットさん?」
「くっ!…聞け、君の機体は損傷が激しい。先導するからマイツ博士の研究所に不時着するのだ」
松堂は、女パイロットが自分より階級がひとつ上だった為、怒鳴れないのが悔しかった。

ネオバンダム   第二十話『プライベート・ルウム』  

「歯をくいしばれっ!貴様!」
ヴァイ・マイツ博士の鉄拳が斎藤の頬を打った。
斎藤は倒れる。
「勝手にバンダムを持ち出しおって…!貴様にはあれがどれだけ大事なものかわかっていまい!」
マイツは斎藤を立たせ、もう一発いった。
斎藤は耐えた。
「なんだ、その眼は、そのっ、反抗的なっ…!」
マイツの顔は紅潮した。
斎藤は、何も言わず黙ってマイツを見返している。
マイツがワナワナとふるえた。
「あとで私のプライベートルームに来い」
「了解です。マイツ博士」
斎藤はあくまでもキゼンとした態度だった。 
* 

松堂はブレイクルームで、ひとりコーヒーを飲んでいた。
そこに早川がやってきた。
「斎藤がマイツに呼び出されたってさ」
「俺達にはおとがめがなくてアイツだけが?なんでだ」
「さあ‥マイツを失神させたのはアイツだしな…。それに、奴…マイツはペースメーカーをつけているんだ。やばかったって話だぜ」
「こってりしぼられるって訳か。ご苦労な事だ…」

 * 

マイツのプライベートルーム。
その自動ドアが開き、斎藤が悲鳴をあげながら、全裸で飛び出してきた。
「ハレ〜ッ!」
続いてマイツが斎藤を追って飛び出した。
全裸だった。
奇声を発していた。

 ネオバンダム   最終話『遠い未来の帝国(くに)で』  

「はっ!」
斎藤は目覚めた。
布団の中で小ドリルが勃起している。
「天皇バンダムはっ…!?」
斎藤は窓から射す朝の光に眼をしかめた。
「浩、朝ごはんできてるよ!」
「わかったよ!」
浩は母親の呼びかけに乱暴に答え、布団から起きあがった。
ドリルの突出はおさまりつつあった。
斎藤は自分の部屋から階段で降りる途中、セーラー服姿の妹に追い抜かれ、つんのめった。
「おいっ!行儀が悪くないか!?」
「邪魔なんだよっ!でぶ!」
妹の良子は、最近兄の浩が太ってきているのが気にいらないのだ。浩がテーブルにつくと、母親が近づいてきて言った。
「お前、今日は松本先輩が迎えに来るんだろ」
「マイ…マツモト先輩が?いけねえ、すっかり忘れてた」

   *  

朝の江戸川土手。
マツモトと浩は自転車で並んで、二人で走っていた。
「このままでは遅刻だな」
「マツモト先輩、すいません。俺のせいで遅くなっちゃって」
「いいんだよ、浩ちゃん!スピードアップだ!」
マイツは思い切りペダルをふみ加速する。
斎藤はついていくのがやっとだった。
「どうした!16等兵っ!」
「まけないぞ、マイツ!」
青い空にテンノーバンダムの飛行機雲が流れてた。
斎藤にはもう見えなかった。

 完







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